コラム

心理的所有感を活かして職場エンゲージメントを高める具体的な方法

#推せる職場づくり #働きがい

今コラムでは、特に職場で自己統制感、知識意識、自己投資の3つを高める具体的な方法について解説したいと思います。

推せる職場ラボの上林です。

人的資本経営が叫ばれる中、職場で従業員のエンゲージメントを高めることは、どの企業においても重要事項となっております。

そのような中、前回のコラムで「心理的所有感」に触れましたが、近年、心理的所有感という概念がエンゲージメントの向上に重要な役割を果たすことが注目されています。

これは、従業員が自分の仕事やプロジェクトに対して「自分のものだ」という感覚を持つことで、仕事への情熱や責任感が高まるというものです。今回は、特に職場で自己統制感、知識意識、自己投資の3つを高める具体的な方法について解説したいと思います。

自己統制感(統制意識)を高める方法

自己統制感(統制意識)とは、従業員が自分の仕事に対して影響力を持てると感じる感覚です。自己統制感が強まると、従業員は自分の役割に対してより大きな責任を感じ、モチベーションが向上します。この自己統制感を高めるための具体的な方法は以下の通りです。

意思決定に従業員を参加させる

従業員に対して、重要な意思決定の場に参加する機会を与えることは、自己統制感を高めるために有効です。例えば、プロジェクトの進行方法や戦略について、従業員からの意見や提案を求め、それを実際に反映させることが重要です。これにより、従業員は自分が会社やチームに貢献しているという実感を得やすくなります。

下記の表は、株式会社NEWONEが、618名のビジネスパーソンに対して調べたエンゲージメント向上に何が相関するのかというデータ結果ですが、働く時間や場所を自己決定できるよりも、担う目標設定に関与できる、チームの方針や問題点に意見が言える、という行動の方が、相関係数が高い結果となっています。

これらからも、重要な方針部分に関与することがエンゲージメントに影響することが見て取れます。

※2023年12月株式会社NEWONEによる618名に対する調査結果

自律性を促すタスクの設定

タスクを与える際、具体的な指示を与えるだけでなく、従業員が自律的に進められる余地を残すことが有効です。タスクの進行方法や優先順位の決定を従業員に委ねることで、彼らはより積極的に業務に取り組み、仕事に対する自己統制感を高めます。

自己統制感を高める取り組み事例としては、以前、エンゲージメント向上の伴走支援をしていた企業で、職場単位でメンバーと共に「どのような組織風土でありたいか」についてエンゲージメントサーベイの項目で設定をするという取り組みを推奨しました。メンバーが関与するその取り組みを行った職場は、その後エンゲージメントスコアが上がる傾向があり、取り組まなかった職場は変化が少なく、改めて関与できることが重要であると感じます。

また、この取り組みでは、「組織風土」という業務目標ではない領域なので、比較的職場単位で自由にできる余地があることも、自己統制感の醸成につながったと感じます。

知識意識を高める方法

知識意識とは、従業員が仕事やプロジェクトに関する深い知識を持ち、それによって所有感を感じることです。この感覚を高めるためには、従業員が組織の全体像を理解し、自分の役割がどのように影響を与えるかを知ることが重要です。

定期的な情報共有と透明性の確保

企業内での情報共有を定期的に行い、従業員に全体像を把握させることが知識意識の向上に繋がります。例えば、プロジェクトの進捗状況や会社の経営方針に関する情報をオープンにし、従業員に提供することで、彼らは自分の仕事が組織全体にどのように影響しているかを実感しやすくなります。

研修や知識共有の場を設ける

業務に必要な知識を習得するための研修や、従業員同士で知識を共有する場を設けることも重要です。これにより、従業員は自分の役割に関する専門性を高め、自信を持って業務に取り組むことができます。

知識意識の取り組み例としては、以前、急成長しているメルカリ社への記事の中で、すべての3000以上あるすべてのSlackのチャンネルがオープンであることが述べられています。

https://slack.com/intl/ja-jp/customer-stories/mercari-organizational-culture

「情報は与えられるものではなく、取りに行くもの」というスタンスが謳われていますが、情報のオープンさが参画意識を高めている事例です。

自己投資を高める方法

自己投資は、従業員が自分の仕事に時間や労力を注ぐことで、所有感が強まる要素です。この感覚を促進するためには、従業員が自分の成長と仕事の成果を結びつけられる環境を提供することが重要です。

目標達成に向けたサポート体制

従業員が自分の仕事に全力を注ぎ、それが成果として認められることは非常に重要です。目標達成に向けた明確なフィードバックとサポートを提供し、従業員が自分の努力が組織に貢献していると実感できる環境を作りましょう。

努力に対する認知と報酬

従業員が日々の業務に注いだ努力を認識し、適切に報いることは、自己投資感覚を高めるために有効です。小さな成功や進歩に対してもフィードバックを行い、適切な報酬を与えることで、従業員は自分の貢献が評価されていると感じ、さらなる努力を続ける意欲が高まります。

自己投資の実施事例としては、以前、支援させていただいていた企業では、業務に対するフィードバックをどの程度の頻度で行っていますか?という問いに対して、四半期・月次・週次・日次の順にエンゲージメントスコアが高い結果となっておりました。その企業では、このデータ結果をもとに管理職にフィードバックの推奨を行っており、貢献実感を高める一助になっておりました。

心理的所有感は日々の業務への埋めこみが重要

心理的所有感を高めることで、従業員のエンゲージメントは大きく向上します。

統制感、知識意識、自己投資を通じて、従業員が「自分の仕事だ」と感じる環境を提供することが、長期的な組織の成功と従業員の成長に繋がります。特に職場の管理職やマネジャーが日々の業務の中で意識的にこれらの要素を取り入れることで、従業員一人ひとりのモチベーションとパフォーマンスを最大限に引き出すことが可能です。

次回のコラムでは、心理的所有感が高まりにくい組織と対比しながら、重要なポイントを明らかにしていきたいと思います。

株式会社NEWONE 代表取締役社長

上林 周平

大阪大学人間科学部卒業。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。
2002年、(株)シェイク入社。企業研修事業の立ち上げ、商品開発責任者として、プログラム開発に従事。新人~経営層までファシリテーターを実施。2015年、代表取締役に就任。
2017年9月、株式会社NEWONEを設立。2022年7月に、「人的資本の活かしかた 組織を変えるリーダーの教科書」を出版。

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