インタビュー

新人の主体性が組織に与える影響とは

ナガセヴィータが挑んだ“育成から変革”への一歩

#オンボーディング #新入社員育成

ナガセヴィータ株式会社の研究技術部門では、新人が自ら組織課題を分析・提言する「主体性を育む研修」を実践。新入社員の熱意がベテラン層や組織全体にどのような変化をもたらしたのか、最終発表の様子と今後の展望についてお話を伺いました。

近年、新入社員の早期活躍を促す「オンボーディング」が注目されています。

ナガセヴィータ株式会社の研究技術部門では、新人が自ら組織課題を分析・提言する「主体性を育む研修」を実践。新入社員の熱意がベテラン層や組織全体にどのような変化をもたらしたのか、最終発表の様子と今後の展望についてお話を伺いました。

近年、人事領域で「オンボーディング」という言葉が浸透し始め、新入社員や中途社員が早期に組織の文化や業務に馴染み、活躍できるように支援する取り組みが広がっています。

推せる職場ラボでは、そうした取り組みの一例として、ナガセヴィータ株式会社の研究技術・価値づくり部門で推進されてきた、部署横断型の「主体性を育む研修」について、以前紹介しました。(前回記事:https://oserushokuba.jp/article/LR2XMrlv

今年10月には、今年度の「主体性を育む研修」に取り組んできた新入社員7名による最終発表が開催されました。
これまで取り組んできた部門全体の業務分類、社内インタビュー調査について、分析結果や見えてきた課題とその解決策の提案が行われ、当日は各部署の上長や先輩社員も参加し、新入社員との対話を通じて刺激を受ける様子が垣間見えました。

今回は、その続編として、全体を推進してきたナガセヴィータ株式会社の研究技術・価値づくり部門 研究管理部 研究管理課長の遠藤伸氏(以下 遠藤氏)、新入社員として5月から研修に取り組んできた山口璃子氏(以下 山口氏)、導入や振り返り研修の企画を担当した株式会社NEWONEの桶谷萌々子(以下 桶谷)と、これまでの取り組みを振り返り、今後の展望について考えました。


主体性が発揮された最終発表

最終発表を終えた今の心境を教えてください。

山口氏:部門全体122名のうち9割を超える方にインタビューできたことに、大きな達成感を感じています。スケジュール調整には苦労しましたが、その中で多くの学びがありました。一方で、最終報告会での質疑応答の進め方など、改善できる部分もあったと思います。

最終発表では、新入社員がインタビューを通じて分析した組織課題に対し、解決策の提案も行いました。ですが、先輩社員が一度は検討してきたような解決策が多く、改善へ向けた具体的なディスカッションには至りませんでした。

事前のインタビュー段階から解決策についての対話を重ねていれば、最終発表もより深みが出たのではないかと感じています。

遠藤氏:最終発表は、私の期待を超えるものでした。新入社員7名がそれぞれの成長をしっかりと見せてくれて大変嬉しかったです。

半月前に発表内容案を確認した際は、整理がされておらず伝わりにくい部分も多くありましたが、私からのフィードバックは少しだけで、その後は一切手を加えず、彼ら自身に任せました。
この研修だからこそ、最後は“自分たちで考えて決める”ことに意味があると考えていたからです。

山口氏:遠藤さんに半月前に発表資料を見せた時点では、業務分類のコア業務と付随業務の一覧や、インタビューから抽出した多数の課題を並べただけで、“それをどう見せるか”という意図や、伝えたいことの整理が十分にできていない状態でした。

遠藤さんとの対話を通じて、まず視座別に組織が抱える課題を整理することから始め、少しずつ改善を重ねていきました。

発表全体を通じて、どんな場面が印象に残っていますか?

遠藤氏:発表後半の質疑応答で、組織課題について議論をしていた場面が印象に残っています。

新入社員から「個人の意識や行動が変われば、組織が変わる」というメッセージが伝えられた瞬間、会場の空気が変わりました。どこか空気が「ピリッ」と引き締まり、「ドキッ」とした表情を見せる先輩社員もいるように見えました。

また、対話の中では、組織を変えるため、現場の社員は「仕組みが変わること」に期待し、管理職は「個人の意識が変わること」に期待しているというギャップも浮き彫りになりました。
多くの社員が、感じていながらも言葉にできなかったことが、新入社員の口から発信された。そのことに意味があったと思います。

山口氏:私自身は、組織課題についての質疑応答が、想定していたより盛り上がらなかったことが印象に残っています。

業務分類の発表後は、質疑応答20分の時間を使い切った一方で、組織課題については、参加者の多くが管理職であったため、発言しづらい雰囲気があったのかもしれません。その違いを質疑応答の中で感じました。

課題は必ずしも悪いことではないと思うので、それに対して皆さんが思うことや感じていることを、もっと率直に意見を引き出すことができれば、対話を深められて良いディスカッションができたと思います。

遠藤氏:ややセンシティブな内容もありましたが、新入社員だからこそ伝えられた部分もあったと思います。

今回の発表で挙げられた課題については、放置せずに、管理職側でも課題を精査し、解決に向けたアクションが取れるように働きかけていきます。

学びと成長のプロセス

これまでのプロセス全体を振り返り、どんな学びや成長がありましたか?

山口氏:今回の研修やインタビューを通じて、「自分たちがアクションを起こせば、周囲の皆さんが応えてくれて、一緒に考えてくれる」ということに気づきました。

その経験から、自ら行動を起こすこと、主体性を発揮することへのハードルが下がり、自信や安心感が芽生えてきたように感じています。

それは遠藤さんが日頃から社内のいろいろな方に声をかけ、どんどん周りを巻き込んでいる姿を見て、「自分もやってみよう」と思えた影響も大きいです。

遠藤氏:そう言ってもらえるのは嬉しいですね。主体的に行動する力、周囲を巻き込む力、質問する力、新入社員においてはどれを取っても最初はハードルがあると思います。

私はこれらの力を小さなことでいいので実践し続けることを、日々促してきました。その結果、段々意識せずにできるようになっていく姿を見てきました。

同じ新入社員でも、個性や強みなど7人それぞれに違うので、私自身も一人ひとりに合わせて関わり方や伝え方を工夫することで、背中を押すことができた部分はあったと思います。

今年から株式会社NEWONEと一緒に研修企画をされた意図や狙いを教えてください。

遠藤氏:昨年から研修がスタートし、最初は自分なりに周囲と相談しながら進めてきました。手応えを感じた一方、「本当にこの取り組みが効果的だったのか」を客観的に確かめたい思いもありました。

そんな時、今年の2月頃にNEWONEのセミナーに参加して桶谷さんと接点が生まれ、主体性をテーマにした体系的な研修と、現場での実践を継続、発展させる仕組みについて相談したのがきっかけです。

桶谷(NEWONE):遠藤さんから、「配属後の継続的な実践に繋がる研修にしたい」というお話を伺い、全体設計の際には、まずは5月の導入研修で、“社会人として求められる主体性”に関する共通認識を持つことを目指しました。

その上で10月の最終発表後に設定した振り返り研修で、一人ひとりが成長を実感し、“主体性”というキーワードを自分の言葉で語れるようになることを意識しました。

遠藤氏:これから成果が見えてくる段階ですが、ここまでの取り組みには手応えを感じています。

組織が変わることを目指して

今後どのような取り組みを進めていきたいですか?

遠藤氏:11月から現場に配属される新入社員が、配属後も主体性を発揮し続けられるように、こちらからも声かけや、サポートは続けていきたいです。

同時に、育成を担う部課長やメンターのマインドも重要なポイントで、育成側の仕組みづくりも強化していきたいと思います。

「組織が変わること」を中心のテーマとして持ちながら、部課長層へも狙いをしっかり共有し、1・2年目の社員が起爆剤となって先輩社員の意識を刺激し、組織全体として主体性が発揮されていく状態を目指します。

挑戦する人を応援することはもちろん、応援する側もまた挑戦意識を高めていくことで、組織が動き出すと信じています。

山口氏:新入社員だからこそ、怖いもの知らずで、組織に対して提案できることもあると思います。今回の研修での経験を、配属後も部署での改善提案などに活かしていきたいです。

桶谷(NEWONE):これまで遠藤さんとも話してきましたが、今1年目や2年目の方々が組織に火種をつくっています。今後は、その火種を中堅社員や、管理職層へと少しずつ広げていくステップを一緒に進めていきたいです。

現場の最前線を支え、活躍されている中堅社員の方々にも、主体性発揮の流れが浸透することで、新人や若手の方のロールモデルが増えていくと思います。

先ほど遠藤さんから話に挙がった「育成側の仕組みづくり」と合わせて、NEWONEとしてどのような支援が出来るか、引き続き共に考えていきたいです。

遠藤氏:中堅層も不安や課題意識は持っている一方で、それを発信することに対して躊躇している方もいます。なぜ発信が難しいのか、そのハードルや背景を一緒に見つめ直し、解決していけたらと思います。

これまで取り組んできた「主体性を育む研修」は、どんな職場や組織に推薦したいですか?

山口氏:仕事に対するやりがいを見出すことができていない方に推薦したいです。

私は、この研修を通じて、小さくても自分なりの目標を設定し、周囲を巻き込みながら行動していくことが自分のモチベーションになっていました。

そしてモチベーションは人に与えられるものではなく、自分でつくり出していくものであることに改めて気づくことができました

遠藤氏:正直なところどんな会社や組織にも、推薦できると思います。

研究所で培ってきたこの取り組みを、今後は“研修モデル”や“育成モデル”として確立し、製造部門や、管理部門、事業部門にも広げていきたいと考えています。

今後は他社の人財育成担当者と対談し、お互いの取り組みについて意見交換するような機会もつくっていきたいです。

これからも未開拓なことや、まだ誰も取り組んでいないことに、挑戦し続けていきたいと思います。

組織全体に主体性が浸透していくことを目指して、これからも挑戦は続きそうですね。本日はお時間いただき、ありがとうございました。


 <ナガセヴィータ株式会社 会社概要>

ナガセヴィータ株式会社は、食品・医薬・パーソナルケア分野向けに機能性素材を提供する研究開発型バイオ企業です。

微生物や酵素技術を活かした独自の研究開発を強みとし、「生命に寄り添い、人と地球の幸せを支える」ことをパーパスに掲げています。

今後は、国内外のパートナーとの共創を通じて、健康と環境の両立に貢献する革新的な素材の開発を目指しています。

・ナガセヴィータ株式会社ホームページ
 https://group.nagase.com/viita/

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