働き方の多様化が進む中、従業員一人ひとりが「働きがい」を持ちながら主体的に働ける環境づくりは、多くの企業にとって重要なテーマとなっています。
オフィス移転を通じて生まれた社員同士のつながりや、若手社員の主体性を育む取り組みについてアジア航測株式会社 東北支社にお話を伺いました。
「働く人が心から推したくなる職場」とは、どんな職場なのか?
「推せる職場特集」は、そんな問いから始まった、組織づくりのリアルを深掘りする企画です。
「推せる職場」とは、働きやすさと働きがいが両立し、思わず人におすすめしたくなるような職場のこと。
本特集では、そんな魅力あふれる職場づくりを実現している企業にインタビューし、取り組みや工夫をお届けします。
今回は、全国各地に拠点を構え、航空測量や空間情報コンサルタント、建設コンサルタント事業を手がけるアジア航測株式会社の東北支社様にお話を伺いました。
取材に応じてくださったのは、東北国土保全コンサルタント技術部の堀口 礼顕氏(以下堀口氏)、戸谷 千鶴氏(以下戸谷氏)、東北インフラ技術部の菊池 拓氏(以下菊池氏)。
東北支社は、2025年5月にウッドライズ仙台へオフィスを移転し、木造ハイブリッド建築を生かした空間で、新たな働き方を模索しています。
このオフィス移転の機会を生かし、単なる「働きやすさ」だけでなく、従業員1人ひとりが職場への参画意識を持ち「働きがい」を高めていくために、どのような取り組みを進めてきたのか、そのプロセスに迫ります。
1.働き方改革とオフィス移転

堀口氏(左)、戸谷氏(中央)、菊池氏(右)
本日はよろしくお願いします。まずは皆さんが普段どのようなお仕事をされているか、お聞かせ下さい。
堀口氏:私は東北国土保全コンサルタント技術部の国土技術課に所属をしており、国土交通省や都道府県の職員の方と連携し、国土の保全や災害対応に携わっています。例えば、土砂災害や土石流が発生した際に、どうすれば住民を守れるのか、そのために必要な施設は何かを検討し、構築していくお手伝いをしています。中でも、私自身は主に砂防施設の設計を担当しています。
戸谷氏:私は堀口が担当している設計の前段階の調査・計画を担当しています。土砂災害や火山噴火の恐れがある地域に赴いて現地調査をしたり、対策計画を作ったりしています。
菊池氏:私は東北インフラ技術課に所属し、道路を中心としたインフラの設計や調査、評価を行っています。国や県の方と連携して、老朽化した橋や道路、道路に付随する標識や構造物などの調査、メンテナンス業務などを担当しています。
また、社会インフラの仕事の他にも、福島県では、環境省の方と原発事故の影響を受けた地域の放射線量調査を行うなど、東北ならではの業務にも携わっています。
どのような経緯から、オフィス移転のプロジェクトはスタートしたのでしょうか?
堀口氏:そうですね。もともと社内には部署を横断した「働き方改革チーム」があり、その一環としてオフィス移転に向けたワーキングチームを立ち上げました。5年ほど前からオフィス移転に向けて動き始めて、メンバーを巻き込みながら、聞き取りや検討を重ねてきました。
途中で私から菊池にリーダーを引き継ぎ、私はアドバイザーとして関わってきました。
以前のオフィスは執務フロアが複数階に分かれていたり、会議室が少なかったりするなど使いづらさがありました。また、休憩スペースもなかったため、若手社員から改善したいというリクエストが多く上がっていました。
社員のそうした声と、上層部のオフィス移転がしたいという思いが重なり、プロジェクトが始動しました。
2.全員が参画できるプロセス

実際にオフィス移転が決まってから、1年以上かけて社員の意見を取り入れてきたと伺いました。どのように進めてこられたのでしょうか?
菊池氏:東北支社では、正社員からパート社員も含めてすべての従業員の意見を聞くという方針で進めてきました。
各課に所属する働き方改革チームのメンバーが意見を収集し、それを全体に集約するという流れで取り組みました。各課に3~4回は意見を聞く場を設けたと思います。
堀口氏:女性社員からは細やかな意見が上がり、ざっくりとした要望がより具体的ものになりました。多様な意見を取り入れることの重要性に気づきました。
様々な意見やアイデアが出てきた中で、皆さんが印象に残っているものを教えて下さい。
堀口氏:私たちはオフィス設計のプロではないので、まず協力会社に提案いただいた設計案をもとに検討を進めました。提案の中には、カフェのようにお洒落な空間や、フリーアドレス制など最近のトレンドを取り入れたものも多くありました。
一方で従業員からは、「休憩スペースは、こんなに広くなくてもいいのではないか」「お洒落さよりも、空間を広く有効に使いたい」「自分たちが働いている空間を大事にして欲しい」などの意見が多く出ました。
流行やお洒落ではなく、質実剛健と言いますか、堅実で実用的な意見が多く出たことが印象的でした。
戸谷氏:ロッカーの区画には女性専用スペースを設けたことで、人目を気にせず荷物を出し入れできるようになりました。パート社員の意見も含め、女性の声を積極的に取り入れたからこそ実現したことだと思っています。
多くの意見を取り入れながらオフィス移転をどのように形にしていったのでしょうか?
菊池氏:ワーキングチームで、案の実現性を見極めつつ、最終的にはできる限り多くの声をオフィスデザインに反映しました。
具体的なイメージが湧かない場合は、協力会社に要望を伝え、図面に落としてもらいながら進めました。図面は立体的なものも共有いただいていたのでイメージが掴みやすく、その図面を見ながら話し合いを重ね、トライアンドエラーを繰り返しながら、理想の形に近づけていきました。
3.組織に生まれた横のつながり

実際に社員の皆さんがオフィス移転に参画したことで、どのような変化や効果を感じていますか?
堀口氏:オフィス移転をきっかけに、みんなで一緒に働き方について考える機会を持てたことで、もともと強かった社内での縦の繋がりに加えて、横の部署同士の関係もぐっと近くなったと感じています。
新しいオフィスのレイアウトも部署を越えた連携がしやすいように、明るく開放的な空間にしています。その結果、オフィス内での活発な意見交換やコミュニケーションが自然に増え、働きやすさにもつながっていると思います。
菊池氏:関西や関東など、他拠点から出張で仙台に来るメンバーが、東北支社のオフィスで仕事をする場面も以前より増えました。使い勝手の良さが広がったことで、自然と人が集まる空間になってきたのだと思います。
このような変化が今後の仕事にも良い影響を与えそうですね。
ちなみにワーキングチームでは、これまで若手の意見も積極的に取り入れてきたと思いますが、若手社員の働き方や変化はどのように感じていますか?
堀口氏:みんな、より明るく前向きに働いているように感じます。
以前は、若手同士の交流は会社がセッティングしないと生まれにくかったのですが、最近は彼ら自身が自発的に交流の場をつくるようになってきました。その主体性は、まさにこのプロジェクトを通じて生まれた変化だと思います。
4.今後の展望

さらに「働きがい」を高めていくために、今後どんなことに取り組んでいきたいですか?
堀口氏:オフィス移転を終えた今、不満の声はほとんど聞こえてきません。ただ、これから使い続けていく中で、様々な意見も出てくると思います。まだ完璧な状態ではないからこそ、これから出てくる声に耳を傾け、さらに良い職場環境をつくっていきたいです。
また今回のように若手社員の意見を聞いて、反映させていく姿勢は、今後も大切にしていきたいです。
菊池氏:これからは、部署を越えたコラボレーションを通じて、仕事へのワクワク感を高めていきたいです。この新オフィスだからこそ、コラボレーションの効果が最大限引き出せると思うので、仕事の拡大と事業の充実に向けて模索していきたいと考えています。
私自身、もうすぐ就職を控える子供がいますが、「こんな職場で働きたい」と思える職場にしていきたいという気持ちはより強くなっています。
東北に根ざして仕事をしたいと考えている学生も多いと思いますので、大学訪問などを通じてアジア航測の働き方や環境を知ってもらい、採用にもつなげていきたいと考えてます。
戸谷氏:これまで若手社員が自分の意見を発信し、主体的に動く機会が少なかったかもしれません。しかし、今回オフィス移転のワーキングチームに入ったメンバーは、自分の意見を出し、実現に向けて動くという経験ができたと思います。次はまた別のテーマで、若手が自発的に動けるような機会を作っていきたいと思います。
東北支社には、「どんな意見もまずは受け止める」というカルチャーがあります。実際に私も「会議室の名前を東北のお祭りにちなんだ名前にしたい」という提案をしたところ、実現しました。
そんなふうに新入社員や若い世代も意見を出しやすく、働く場所に愛着を持てるような職場をつくっていきたいと考えています。
これから、どんな挑戦やつながりが生まれるかますます楽しみですね。本日はありがとうございました。
<アジア航測株式会社 会社概要>
空間情報コンサルタント。 高度なセンシング技術をベースとした空間データの収集・解析、活用提案、実施プラン策定まで、一貫した技術サービスを提供。 計測用の航空機(テキストロン・アビエーション、セスナ)を7機保有し、整備運航まで自社で行う。 航空機だけでなく、衛星やドローン、車両などのあらゆるプラットフォームによるセンシングデータを活用し、国土保全やインフラマネジメントに貢献している。
・公式サイト
https://www.ajiko.co.jp/
・採用ページ
https://www.ajiko.co.jp/recruit/
・talentbook企業ページ
https://www.talent-book.jp/ajiko
