月間ノミネートポストの中から投票を行い、2024年11月4日(いい推しの日)に株式会社ソルトワークス様が「#推せる職場大賞」に選出されました。今回は、株式会社ソルトワークス執行役員の星様、人事担当の三品様に、推せる職場ラボ所長の上林周平がお話を伺いました。推せる職場をつくるためのアプローチを人事と経営の視点から紐解きます。
推せる職場ラボのSNS公式アカウントでは、2024年6月からハッシュタグ 「#推せる職場」をつけて職場の“推せるところ”を募集し、毎月の投稿から、「#推せる職場月間ノミネート」を発表してきました。
月間ノミネートポストの中から投票を行い、2024年11月4日(いい推しの日)に株式会社ソルトワークス様が「#推せる職場大賞」に選出されました。今回は、株式会社ソルトワークス執行役員の星様、人事担当の三品様に、推せる職場ラボ所長の上林周平がお話を伺いました。推せる職場をつくるためのアプローチを人事と経営の視点から紐解きます。
ソルトワークスについて
-上林
まず最初に貴社の簡単なご紹介をお願いします。
-三品
弊社は、2008年に札幌市で創業した企業です。私たちは、「関わるすべての人にワクワクをふやす」というビジョンのもと、システム技術とデザイン力を武器に自社開発で生み出したプロダクトを通じて多様なサービスを展開しています。
現在、約60名のスタッフが在籍しており、デザイナーやエンジニアを中心としたクリエイティブ職がそれぞれの経験や専門性を活かして自社サービスの開発に取り組んでいます。
-星
広告代理店出身の創業者が、その経験を足がかりに新たなビジネスを模索していく中で、プリント事業が多くのお客様に支持されました。プリント事業が弊社の成長の原点となり、今では現代の多様なニーズに応えるためにマーケティングを強化し、新たな事業領域への挑戦を続けています。
-上林
ちなみに、三品さんはなぜソルトワークスに入社をされたんですか。
-三品
ソルトワークスに入社を決めたのは、札幌から積極的に自社開発の事業を展開している姿勢に面白みを感じたからです。社会人の始まりは東京でしたが、ライフプランの変化でUターンを考えた際に、札幌のIT業界では受託開発をメインに事業展開する企業が多いことに気づきました。その中で、事業会社として自社開発に取り組むソルトワークスのような企業は札幌では珍しく、魅力を感じました。
私自身がフリーランスとしてさまざまな規模や業種の人事・広報に携わってきた経験から、事業会社の特徴として、スタッフの成果が事業の成長に直結しやすいことを実感していました。この点は、組織の一体感やエンゲージメントを高める重要な要素だと捉えていたので、人事という役割においてもビジネスモデルを重視していました。また、カルチャー醸成がしっかりしていると感じたことも入社を決めた大きな理由です。
組織づくりで大切にしていること

-上林
改めて本題に入っていきますが、今回「#推せる職場大賞」を受賞されて、率直な感想をお聞かせください。
-三品
今回のようにSNSで取り上げられ、多くの方々に評価いただいたことは、共感を得られたからこその結果だと感じています。今後の取り組みへの大きな励みになりますし、とてもありがたいなと思います。
-星
大変光栄なお話だと思っています。私が執行役員に就任してから約1年半が経ちますが、その間に取り組んできた改革の一つが広報機能の強化でした。今回の受賞は広報担当者が積み重ねてきたことが実を結んだことでもあるので、広報活動によって会社を評価していただけたことがとても嬉しいです。
-上林
なぜ、星さんは経営として広報を強化しようと思われたのですか。
-星
やはり事業会社として内に閉じるのではなく、自分達の仕事が社会に対してどれぐらい貢献し影響を与えているのか、つまり弊社の存在価値をブランディングとして外にもっと発信していく必要があると感じていました。
今後の経営戦略上、様々な企業様とシナジーを共創することができるアライアンスを組んでいきたいと考えています。そのためには、少なくともソルトワークスの名前が広く認知されている状況をつくる必要があり、機能強化および課題解決の一環として取り組んできました。
-上林
たしかにアライアンス強化や、社内のメンバーが自分達の価値に気づくインナーブランディングの効果もありそうですね。その点も含めて、御社の組織づくりでは、どのようなことを大切にされていますか。
-三品
自社開発を行っているため、社内のコミュニケーションが事業の成長を支える大切な要素になります。そのため、オフィス環境や福利厚生も含め、建設的なコミュニケーションが促進される環境になっているかを意識しています。
また、弊社はキャリア採用の中途入社者が多いので、創業以来大切にしてきたカルチャーを大切にしながらも、多様なバックグラウンドを持つスタッフの原動力が事業成長に繋がるような職場づくりを続けていきたいです。
-星
経営レイヤーの視点では、組織の自由度を高め、創発が生まれやすい仕組みをつくることを大切にしています。同時に、大前提としてビジネスモデルの収益性を高めるためにリソースの最適な配分も意識しています。
さらなる成長を目指す向上心のあるスタッフが高いパフォーマンスを発揮した時に、それに見合う報酬や次のポジションを用意し、希望を持てる会社でなければならないと思っています。
もう一つは人材の離脱によるダメージを最小化することも大事にしています。例えば、社内で新しいイノベーションが生まれた場合、そのプロセスを人手を介さずにDX化する方法を間をおかずに考えます。そうすることで、DX化が「余白・余力」を生み出し、また新しい価値創出に向けてメンバーが積極的に動ける環境を整えることができます。
「推せる職場」をつくるための取り組み

-上林
先程の話にも少しありましたが、「働きやすさ」と「働きがい」を高め、「推せる職場」をつくるために御社が取り組んでいることを教えてください。
-星
働きがいを高める施策としては、社内公募システムとして「SALTQUEST(ソルトクエスト)」というものがあります。これは社内におけるイノベーションの促進や、ユニット間の協同、リソースの共有を目的をしたもので、有志メンバーを募ることができる仕組みになっています。
常々考えていることですが、やはり仕事自体が面白くなければ人は定着しません。仕事に対してチャレンジ精神を前に出してきたメンバーがいたときに、他のメンバーも自然と協力できるような仕組みをつくりたいと思いました。
「SALTQUEST」では、勉強会を開きたいという提案やシステムエンジニアが開発したシステムをテストしたいなど、組織及び個人の成長や互恵に関わるあらゆる募集ができます。弊社はシステムエンジニアが多数在籍していますので、独自でシステムを構築し、社内に展開しました。

もちろん全員がそれに参加することを強要はしたくなかったので、参加したことをログに残して、人事評価の要素として加点評価するようにしています。このような取り組みを通じて、社内の横の繋がりが出来ていくこと、イノベーション創発に繋がっていくことを期待しています。
-三品
確かに星が執行役員に就任してから、新しい取り組みが増えてきた実感があります。これはスタッフが会社のためになると考えたときに、ひるまず行動できる土壌が整っているからだと思います。その背景には、経営層による迅速な経営判断と決裁スピードがあることも大きな要因だと感じています。
例えば、クリエイティブチームで発案した展示会を社外で初めて開催した事例があります。現在進行形のプロジェクトでは、入社3年未満のWEBマーケターが発案した新規事業も動いており、若手メンバーの発想が事業の成長に貢献しています。
-星
スタッフが「ヘビの生態調査に行きたい」と言い出したこともありました。弊社は年賀状の事業も手がけているので、十二支の中でも難易度の高いヘビのデザインをどうしようかと悩んだ結果、札幌の円山動物園にヘビの見学会に行きたいという提案が「SALTQUEST」から上がってきました。
その提案に予算をつけたところ、メンバーの家族も同行する一大イベントになって、当日は動物園の爬虫類担当の方に説明をしていただき、動物園の一般のお客様も一緒に説明を聞いているという状況が生まれたそうです。弊社の公式noteでも、その記事が閲覧数上位に入っています。
※ヘビの見学会の様子はこちらからご覧頂くことができます
-上林
そのような挑戦を、どのように称賛されているのでしょうか。
-星
称賛というよりは、そのような挑戦を通じて権限がどんどん広がっていくイメージです。弊社の場合、どちらかというとチャレンジしない、行動を起こさない方が良しとされない文化があります。
-上林
なるほど、チャレンジが当たり前のカルチャーがあるんですね。逆に組織づくりに取り組む中で、困難や葛藤はありましたか。
-星
多様性の時代と言われる中で、弊社もいわゆるミレニアム世代以下の若い年代と、ベテランスタッフ層との価値観をどのように擦り合わせていくか、旧来のバイアスをどのように乗り越えていくか、という葛藤はあると思います。
例えばコロナ禍でリモートワークが導入され、その後状況が落ち着いた後、リモートワークを縮小するのか、それとも続けていくべきか、という議論でぶつかり合いが生まれたこともありました。
メリット・デメリット双方を勘案した上で、私はリモートワークを続けるべきだと思ったので、時間をかけ社内全体に対しての施策継続の有用性を説き、理解を得ることができました。

-上林
やっぱり多様な価値観を擦り合わせることは難しいと思いますが、御社の「ニックネーム制度」などは、価値観の擦り合わせや、建設的なコミュニケーションの促進を狙っているものなのでしょうか。
-三品
そうですね、コミュニケーションの促進に繋がっていると思います。年次や年齢に関係なく全員にニックネームがあり、メールアドレスや社内システムは全て、ニックネームで表記です。新しいメンバーの入社初日は、午前にニックネーム決めのミーティングが行われ、そこから仕事が始まる流れになっています。
-上林
すごいですね。実際このニックネーム制度、社員の方の反応はいかがですか。
-三品
ニックネームがきっかけでコミュニケーションが生まれることが多いので、特に入社後すぐのオンボーディングの段階で有効だと感じています。全メンバー共通の仕組みがあることで、初対面でも距離感が縮まりやすく、組織全体に馴染むスピードが早くなる印象があります。
-上林
なるほど。他に社内外にもっと広く知ってほしい御社の推しポイントはありますか。
-三品
社内コミュニケーションに関連してお話しすると、弊社のオフィスは実際に弊社で働いているアートディレクターが設計に関わっています。
例えば、執務スペースはパーテーションで区切られた集中しやすい環境になっており、フリースペースでは至るところでミーティングや休憩ができるようになっています。ただ単に見栄え良くオシャレにしたいというわけではなく、エンジニアやデザイナーが多く在籍する組織において、いかに生産性を上げられるかを意識しています。

最近は、スタッフの発案でオフィスロボット(LOVOT)を導入しました。ハイブリッドワーク勤務(出社・リモートワークの併用勤務)で減少しがちな偶発的コミュニケーションを増加させる効果が出ています。
また、休暇制度の見直しなど、利用率や運用にフィットしない施策はスピーディーに撤廃し、実用性のある施策を新たに導入するなど組織の循環を巡らせながら、柔軟に進めています。
今後の展望
-上林
最後に今後の展望についてお伺いしていきたいと思いますが、まず採用の視点では、東京と札幌で採用のしやすさに違いはあるのでしょうか。
-三品
人材の流動性が高まっているのは、どの地域でも共通していますが、地方という観点で見ると、特にこの数年で大きな変化があったのは「エンジニア採用」です。東京の企業を中心とした全国採用(フルリモート)の広がりによって、道内企業だけでなく全国の企業が競合となり、地場採用の難易度が上がっています。
その要因には、首都圏と地方の条件面での格差や母数の少なさが挙げられます。このような状況下では、採用市場の変化を敏感に捉え、自社で是正すべき点には迅速に対応することがより重要になっています。
一方で、東京と比べると札幌の採用市場では競争率がそれほど激しくなく、また採用のトレンドが浸透するまでには、2〜3年遅れが見られることもあります。この違いは、採用活動における戦略やアプローチを工夫する余地を生みます。もちろん一概には言えませんが、最新の動向をキャッチアップし、しっかりとやるべきことを実行していければ、採用を成功させる環境は十分にあると考えています。
-上林
なるほど。今のお話は地方の会社さんにも響くようなメッセージですね。ちなみにリファラル採用のような、社内メンバーからの紹介採用も多いのでしょうか。
-三品
直近1〜2年の採用活動では、リファラル(社員紹介)経由での採用は全体の約5割を占めています。人事として非常に心強く、対外的な広報や採用活動にスタッフが協力を惜しまない姿勢が社内に根付いていることを示していると思います。
-上林
リファラル採用が5割というのはすごいですね。どのような施策が効いているのでしょうか。
-三品
まず約2年前にリファラル採用の制度設計を見直しました。これまでも就業規則には記載していましたが、積極的に周知はされていませんでした。そのため、要点やFAQ、最新の求人情報をまとめたドキュメントを社内ポータルに常時公開し、内容を明文化した上で改めて会社として推進していきたい旨をスタッフに伝えました。
リファラル採用が機能するためには、スタッフが友人や知人に紹介したいと思える会社であることが前提です。そのため、スタッフ自身の会社へのエンゲージメントが問われます。リファラル採用に協力的なスタッフを「エンゲージメントが高い」と定義するならば、そうしたスタッフが新たなメンバーを連れてきてくれるという好循環が生まれます。
その意味では、制度設計だけでは不十分であり、エンゲージメントを高める施策とともに、選考時からカルチャーフィットや事業への共感を見極めることが欠かせません。その結果、質の高い採用が可能になり、組織力の強化にも繋がっていきます。
-上林
素晴らしいですね。それでは最後の質問になりますが、今後更に強化したい取り組みや目標があれば教えて下さい。
-三品
人事目線では、スタッフが望むキャリアを安心して挑戦し続けられる職場でありたいです。それを実現するためには、会社からの支援と、個人のコミットメントの両方が必要になると思います。
ここ1〜2年の退職者の退職理由を振り返ると、挑戦を目的としたケースが多く見られました。だからこそ会社へのコミットメントが、個人のスキル向上や成果にも繋がるような仕組みを整える必要があると感じています。さらにそこで得た経験や実績が、キャリアを越えて人生全体の糧となるよう、後押しできる環境づくりを目指していきたいです。
-星
会社を概念的に表現するならそれは、「社会に価値を生み出す仕組みそのもの」だと思います。所属する個人が能動的に仕事に取り組むことで、良い科学反応が生まれて特定の価値が生成され、従業員はその対価として報酬を受け取ることができる。この基本設計は、どの会社においても普遍的なものです。私たちはこの仕組みにおいて特に個々のコミットに自ら楽しみを見出せることを目指しています。個々がソルトワークスに対して良い仕事を提供できれば、結果として価値あるアウトプットを世に出すことができる組織であると言えます。
なによりも、職場が一人ひとりの人生をより豊かにさせる場でありたいと願っています。職場で過ごす時間の割合は本当に大きなものなので、振り返った時に各々が「ここに時間をかけてきて良かった」と思える組織を作り続けていきたいです。
-上林
素晴らしいですね。本日は沢山お話を聞かせていただき、ありがとうございました。

- 株式会社NEWONE 代表取締役社長
- 上林 周平
- 大阪大学人間科学部卒業。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。
2002年、(株)シェイク入社。企業研修事業の立ち上げ、商品開発責任者として、プログラム開発に従事。新人~経営層までファシリテーターを実施。2015年、代表取締役に就任。
2017年9月、株式会社NEWONEを設立。2022年7月に、「人的資本の活かしかた 組織を変えるリーダーの教科書」を出版。
