以前お客様から、以下のような相談を受けたことがあります。
エンゲージメント向上のために幹部社員が1年間活動してきた結果、幹部社員がエンゲージメント向上活動をしているかというスコアは22ポイントあがったが、社員のエンゲージメントスコアは1ポイント下がった
エンゲージメント向上が重要視される中で、なかなかうまく実施できない企業もありますが、どのようにすればエンゲージメントが高い職場を作れるのかを、まとめてみたいと思います。
エンゲージメントが高い職場を具体化する
“エンゲージメント”という言葉が曖昧であり、人によって解釈が違ったりします。
また、その解釈の違いが具体的な施策につながりにくかったりします。
推せる職場ラボでは、エンゲージメントが高い職場を、「働きやすさ」だけでなく「働きがい」があり、かつ人に推し(推薦・紹介)たくなる職場と具体化し、”推せる職場”と定義しております。
また、この「働きがい」は、達成感との関連性が強く、半数程度の力の発揮で「達成感」や「働きがい」は感じられにくいものであり、成果に向けて、強みを活かして前のめりに力が引き出される状態を指していると捉えています。
このように、具体化すると打ち手が見えやすくなるものです。
優しすぎる職場に要注意
残業時間やハラスメントに関連した法律の改定に伴い、この10年間で、職場環境が変わった企業は多くあると思います。
一方で「働きやすさ」は増したが、「働きがい」は感じにくい「優しすぎる職場」が増えているともよく言われます。
職場は、成果を出して業績を上げることが重要ですが、優しすぎる職場だと、業績が上がりにくかったり、メンバーが成長しづらかったりし、その点に嘆く経営者や人事責任者と会うことが多いです。
ステップで見てみると、過重労働やハラスメントがあり、所謂ブラックと揶揄されるような職場を我々は「残念な職場」と定義しています。
そこから法改正対応等で、過重労働やハラスメントが減り、働きやすさが増すステップとなります。
一方で、限られた時間で、かつハラスメントを恐れることで、成長や貢献実感を得られるようなストレッチ体験ができずに働きがいが得られていない状態、すなわち「優しすぎる職場」になってしまう企業が多く見られます。
その制約条件の中で、成長実感や職場への貢献実感が得られる状態を作ることが、「働きがい」がある”推せる職場”につながります。
推せる職場を作ることが難しい理由
「働きやすさ」だけでなく「働きがい」があり、かつ人に推し(推薦・紹介)たくなる職場である「推せる職場」を作るプロセスの中では、いくつかの壁があり、それが作る上での難しさでもあります。
1つ目は、信頼関係の壁です。
そもそも職場環境や人間関係が悪く、働くことへの意欲も少なくなり、マネジャーもメンバーも職場が変わるイメージが持てない状態になっていることです。
2つ目は、働き方改革の壁です。
前提として、残業時間削減やハラスメント防止はとても大事なことです。
一方で、労働時間の短縮を重視しすぎたり、ハラスメントを恐れて表面的になってしまうことで、ベースの信頼関係はあっても、チャレンジやシナジーが行いにくい状態になってしまうことです。
3つ目は、勧めることへの壁です。
良い職場だったとしても、他者への推奨行動(推薦や紹介)までつながらない壁です。リファラル採用のような仕組みが無いことや、外部ネットワークの少なさ、自職場の良さが言語化できていない等の要因があります。
壁を乗り越えるために行うべきこと
3つの壁を述べましたが、それぞれの壁に対して、状況に合わせて乗り越えていくことが大事です。
状況に合わせてだからこそ、様々な施策パターンがあるため、すべてのパターンはここでは書ききれません。
一方で、壁を乗り越え、推せる職場を作るために大事なポイントを一つあげるとするならば、推せる職場は、マネジャーだけが作るものではなく、
推せる職場は、皆で作るものである
という点です。
推せる職場ラボでは、「ポジティブ感情」「自己決定感」「成長・貢献実感」からなるエンゲージメントサイクルを定義しています。
「ポジティブ感情」
仕事・上司・チーム・会社の何らかにポジティブな感情が無いと施策が上手く機能しない。例えばメンバーのために表彰制度を入れても、すべてにネガティブだと効果がない。「職場に感情を持ち込むな」というような過去があったとしても、推せる職場づくりでは、このポジティブな感情に注目することが大事である。
「自己決定感」
仕事や会社に対してポジティブな感情を持っていても、自発性なく作業的に仕事を行ってしまう人は一定数いる。その分岐点は自分で決めている感覚である自己決定感にある。特に、チームの方向性や行うこと自体に対して、自分も関与している感覚が大事である。
「成長・貢献実感」
行ったことに対して反応が無ければ行動は続かないものである。やりがいや働きがいで使われる”甲斐”は「行動の結果として現れるしるし」とも定義されており、反応は大事である。また、意味を感じるフィードバックがあるからこそサイクルが回り続け、ポジティブ感情が増幅されるものである。
このエンゲージメントサイクルを意識することが、”皆で作る”につながり、一つ一つの壁と向き合えるようになります。
信頼関係の壁に対しては、1on1等でベースの関係性は築きつつ、職場内での相互理解を増やし、職場の小さな変化を皆で気づく機会を作っていくことが大事です。
働き方改革の壁に対しては、職場方針や課題に対するメンバーの関与機会を増やし、その結果自発的な行動を増やし、日々皆で手ごたえを感じる中で、総労働時間を増やさない感覚をつかみます。
勧めることへの壁に対しては、自職場の推しポイントを皆で言語化し、皆で磨いて自らリファラル採用を行い、入っていただいた方に推しポイントを体感していただくようなプロセスが大事です。
皆で作ることには難しさもある
ひと昔前は、飲みニケーションという言葉もあったように、職場以外でも一緒にいる時間を増やすことで、互いの関係性を強固にしたり、方針の背景を理解したりすることが出来ました。
また、終身雇用の意識が強く、簡単には退職しない前提があるため、良い関係性を築かなくても問題になりにくい状況でもありました。
そういった経験をしてきたマネジャーは、飲みニケーションも減った今の環境でのチーム作りに難しさを感じています。
だからこそ、マネジャーの意識改革とスキルアップが求められます。
また、メンバー側にも、そういった背景を理解した上で、チームにかかわるスタンスの向上が求められます。
その上で、職場単位で”推せる職場”を作ることが大事です。
ただ、人は自分が経験したことが無いことを実行することは難しいです。
だからこそ、いくつかの部署を伴走支援することで”推せる職場”を作り、その職場をロールモデルとして、他部署に展開していく動きが大事です。
本ラボでは、一つでも多くの”推せる職場”の実態を明らかにすることで、様々な企業が推進する上での材料となることを目指して、これからも邁進したいと思います。
