この7月に始動した「推せる職場」ラボ。そもそも、このラボの構想はどのように始まり、これからどこに進んでいくのでしょうか。ラボ編集部が所長の上林に改めて話を聞いてみました。上林が代表を務めるNEWONEの組織づくりの話も交えながら、じっくりと「推せる職場」を紐解いていきます。
推せる職場ラボを始めた背景
ー 今日はよろしくお願いします。はじめに、どこからラボの構想が始まったのか聞かせてもらってもよろしいしょうか?
そうですね。ラボの背景としては、最近の職場論って、よくここがダメだとか、最近の若者は緩いとか、ブラック企業がどうだとか、悪いところに対する調査結果やメッセージが溢れている一方で、逆にどういう状態が良いのか、どうアプローチしたらいいのか、そこが結構フワッとしている感じがあります。
それでは良くなっていかないんじゃないかと前々から思っていたのと、ちゃんとしたファクトとか分析を踏まえて、色んな企業が良い職場をつくっていく一歩を踏み出しやすい環境をつくりたいという想いから動き出しました。

「推せる職場」に着目した理由
ーなるほど。ちなみにエンゲージメントを軸に事業を展開してきたNEWONEが「推せる職場」というキーワードに着目した理由はなんでしょうか?
ここは色んなものが絡まっているので、改めて整理はしていきたいんですが、1つはエンゲージメントという言葉が人によって解釈が違うという実情があります。
これはかなり問題意識が高いところなんですが、リスキリングも、離職防止もエンゲージメント向上だと言われ、ハラスメントがないことがエンゲージメントとまで言われたりしています。そうではないということを言いたくて。
やはり主体的に仕事に没頭しているということが大事だと思うんです。いわゆる「推し活」というのも自分がやりたくて主体的にやっている感覚があるのではないでしょうか。エンゲージメントを分解した時に「働きやすさ」と「働きがい」があるとします。働きやすくて働きがいがない職場を「優しすぎる職場」とすると、働きやすくて、かつ働きがいもある職場が「推せる職場」になります。

だから単に良い職場を作ることはもちろん、良い職場だからこそ人に推してみたくなる、「うちの仕事面白いんだけど来ない?」みたいなことを言えるというのが、本当に良い職場、つまり「推せる職場」なんじゃないかなという風に思っています。
これからの時代、どんどん人材が枯渇していく中で、極端に言えば「お金を払ってでもこの会社で働きたい」と思うくらいの会社じゃないと、人は採用できない時代になるんじゃないかと思います。だから魅力的な職場をつくっていかなければならなくて、その1つの例として「推せる職場」があるのではないでしょうか。
優しすぎる職場が増えている背景
ー「優しすぎる職場」が増えている背景には何があるんでしょうか?
そうですね。ハラスメント防止法や残業時間の公表等、働き方改革の前に法律が変わって、どんどん職場の環境が変わっていったという背景はあると思います。その結果、働きがいではなく、働きやすさ、すなわちハラスメントを減らす、労働時間を減らすといった部分に皆が注目してしまったのです。
一方で単に時間を減らしたり、ハラスメントを減らそうとすると、ちょっとでもプレッシャーに感じることはしないといった、リスクある少し深めのコミュニケーションではなく、表面的な業務だけのコミュニケーションになってしまい、その結果として働きがいが下がっているという状況になっているのかもしれません。

ーそんな中で「推せる職場」をつくりたいというモチベーションは、どこから生まれそうでしょうか?
そうですね、そもそも自分の職場を「推したい」と思えることは純粋に幸せだろうなと思いますが、具体的なところでは採用活動に関わることも、そのキッカケになるかもしれないですね。
とある大手企業のお客様で部長職の研修をご一緒したとき、社内公募制度などの機会を想定して、自分の職場の「推しポイント」を言語化して発表するというワークをやったんですが、それがすごく盛り上がって、良い対話が生まれたんです。
一方、部長クラスの方でも自分の職場に良い人材を引っ張ってこよう、採用しようという前提がないことも多いので、その認識が変わっていくことも必要だと思います。このあたりは、今後更に考えていきたいところです。

推せる職場ラボで取り組みたいこと
ーこれから「推せる職場ラボ」では、どんなことに取り組んでいきたいですか?
色んな経営者の方、人事の方、なんなら人材ベンダーの方も一緒になって、推せる職場にしたいよねとフラットでオープンに言える状況をつくっていきたいです。
今後取り組んでいきたいことは、推せる職場ゲームをつくって共通認識を広げていくことや、推せる職場をつくるための対話の方法を展開していくこと等、どんどん「推せる職場」になることをトライしたくなる環境をつくっていきくことです。
我々は、書籍や定量調査だけでは生まれない手触り感のようなものを大事にしていきたいと思っています。やはり人間味や感情があるところなので、理論やデータの分析結果を研修やワークショップ等の場で取り入れ、フィードバックをいただきながら進めていきたいと思います。
そこにSNS企画も絡めながら、推せる職場とはどんなものなのかを有識者が語るだけでなく、たくさんの働く人が発信して、ポジティブに広がっていくような状態を目指したいですね。我々は、そんな想いを持っています。
(後編に続く)
