「well-working 労働にまつわる社会課題をなくし、誰もがその人らしく働ける社会をつくる。」をミッションに掲げ、急成長を続ける株式会社SmartHR(以下、SmartHR)。SmartHRは2024年7月、組織と事業の拡大に伴い、創業以来掲げてきたバリューを刷新しました。新たに定められた3つのバリューは、単なるスローガンではありません。「2030年に売上1,000億円を達成するために必要な競争優位性を作り続けるための行動指針」として再定義され、日々の意思決定や評価制度にも組み込まれています。
本記事では、バリュー刷新の背景とそのプロセス、そしてどのように社員の共感を生み、働きがいへとつなげているのかを紐解きます。
取材に応じて下さったのは、CEO室でバリュー刷新のプロジェクトを推進した荒木 彰氏(以下、荒木)と、ブランディング統括本部でマーケティング領域を担当する大久保 志朗氏(以下、大久保)。経営と現場、双方の視点からこれまでの歩みと未来への想いに迫ります。
「広がりやすさ」と「合理性」のあるバリュー
2024年7月にバリューを刷新されたとのことですが、バリュー刷新の背景や当時の課題意識について、改めてお聞かせ下さい。
荒木:
以前は7つのバリューがありましたが、数が多く、覚えきれない、解釈にばらつきが生まれるという課題がありました。社員数が1000人規模へと拡大する中で、経営陣からも「今の組織と事業フェーズに合ったバリューに見直すべきではないか」という声が上がり、検討を始めました。
大久保:
当時、マネジメントに携わっていましたが、評価時に、各メンバーが7つのバリューをどのように体現しているかについてコメントを書く必要がありました。似た内容のものや、解釈が難しくて答えにくいものもありましたね。組織の拡大に伴い、バリューの解釈のばらつきを解消し、より筋肉質な組織へ進化させるタイミングだったと思います。

SmartHRの3つのバリュー
全社会議でバリューの刷新が経営陣から発表された時、どのように感じましたか。
大久保:
チャット上でポジティブな反応が多くあがっていました。いきなりトップダウンで決めるのではなく、半年ほど前から「バリューを変えます。それに向けたプロジェクトが動き出すので、進捗も共有していきます」という全社に向けた発信があったため、プロセスが見えていたことも大きかったと思います。
荒木:
新しいバリューは半期に一回行っている全社会にて共有しましたが、「とってもいい」という声が多く挙がりました。すぐにチャットで使える絵文字をつくろうとする人もいて、自然と広がっていく様子が印象的でした。
弊社は比較的フラットな社風で、良い点も気になる点もオープンに発言できる環境ですが、ネガティブな反応は非常に少なく、前向きに受け止めてもらえたことに、まずは安心しました。
大久保:
3つとシンプルになったこと、そして「光」「偉業」「象」というモチーフが、日常のコミュニケーションでも使いやすい言葉だったことが良かったと感じています。
荒木:
「どうすれば浸透しやすいバリューになるか」という点については、非常に考えました。そのためにモチーフを設定し、結果として日常的に自然に使われるようになったことには、手応えを感じています。
大久保:
当時を振り返ると、「光」「偉業」は想像しやすい一方で、「象って何だろう」という声は出ていたと思います。
荒木:
あえて少し引っかかりをつくることで、その意味を自分なりに考え、腹落ちした方がより納得感が増すだろうなという想いはありました。「なぜ変えるのか」「どんな課題があるのか」「なぜこの言葉なのか」はすべて言語化し、社内向け資料として公開しています。以前のバリューに対する社員の愛着も強かったので、言葉選びや納得感については丁寧に進めました。
SmartHRは非常に合理性を大切にする会社なので、感覚や雰囲気の要素が少しでもあると上手く進められないか、広く浸透はしません。逆に言えば、合理的な意思決定のもとで設計すれば、社員の納得感は得られると思っていました。この「広がりやすさ」と「合理性」の両立は、特に意識していたポイントです。

以前は7つあったバリューを、どのように3つに絞っていったのでしょうか。
荒木:
まず7つが6つ、5つと段階的に整理され、最終的に3つに落ち着きました。経営陣とは約半年間、議論を重ねました。
以前の価値観をなくすのではなく、言葉がより洗練されたという感覚です。例えば、以前のバリューにあった「ワイルドサイドを歩こう」や「最善のプランCを見つける」という視点は、現在の「偉業(人が欲しいものを超えよう)」に含まれていると考えています。
大久保:
たしかに「偉業」というバリューについては、「人が欲しいと思うものをつくろう」という以前のバリューから「つくるだけではなく、期待値を超えよう」というメッセージに変わったことも、納得感がありました。
荒木:
創業期は「いいプロダクトをつくり、市場を広げ、売っていく」という前提がありましたが、事業の成長と共に市場環境や競合環境が変わる中で、「つくる」だけではなく「超えていく」必要があるというメッセージを込めています。
大久保:
組織も変化する中で、「光」「偉業」「象」の3つが有機的に繋がり、切り離せないものだと思っています。今より従業員数が少なかったスタートアップ期は「光」がよく言われ、「とにかく早くやって検証する」というスタイルでしたが、1000人を超える今の組織規模では、スピードが早いだけのコミュニケーションでは不十分で、質との両立が欠かせません。「光」の速さで動く一方、最適なゴールにたどり着くために、「期待を超える(偉業)」に繋がるかどうか、という視点とセットで考えることが大切です。

バリューの体現を称え、行動へとつなげる仕掛け
どのような場面でバリューの浸透を感じますか?
大久保:
実際に現場でも「『光』で行きましょう」「全社アワードでMVPを受賞できるくらいの『偉業』を全員でやり遂げよう」といった会話が生まれています。
SmartHRでは、”SUMMIT”という全社アワードを年2回開催し、バリューを体現しながら高い成果を上げたメンバーを表彰しています。アワードという形で称えることで、会社としての理想的な姿や成果がより分かりやすく示されるようになりました。SUMMITは、バリュー刷新後にスタートした新しい取り組みで、荒木さんが中心となって立ち上げました。
荒木:
アワードは、バリューを体現し、かつ成果を上げている人が対象です。SUMMITのような場そのものが、バリューを体現する人や体現の仕方を共有する機会にもなっていると感じています。
大久保:
仕事での成果軸と、バリュー体現軸の両方が重なった結果、多くのメンバーから「この人なら納得だ」「本当に凄い」と思われる人が投票で選ばれます。その姿を見て「自分たちもあそこを目指したい」というモチベーションが生まれているので、バリュー浸透に大きく影響していると思います。

バリューを浸透させるために、他にどのような取り組みを行っていますか?
荒木:
入社時のオンボーディングで、バリューに関するワークショップを実施しています。まずは「自分の業務でバリューを体現するとしたら、どんな行動をしてみたいか」を具体的にイメージしてもらいます。そして入社1ヶ月後に「実際に体現できそうか」「次は何を意識するか」を振り返るという流れです。人事担当者からは、これによって早い段階からバリューを意識する人が増えたと聞いています。
そして最も重要なのは、人事評価制度にバリューの視点が組み込まれているかどうかです。バリューに納得したうえで、さらに体現すれば評価にも繋がります。これによって誰もが普段からバリューを意識するようになっています。
また、バリューの刷新に伴い、人事制度の見直しや評価システムへの反映など、本来であればかなりの時間がかかりますが、人事チームが短期間で、評価制度に新しいバリューを組み込んでくれました。まさにバリューで掲げる「光」の速さを体現するモデルケースとなった分かりやすい例でした。こういった動きが会社全体へのバリュー浸透や納得感にもつながったと思います。
大久保:
SmartHRはタレントマネジメントのシステムを提供していますが、バリュー刷新やバリュー体現者を表彰するアワードの誕生など新しい仕組みに変わったことで、社内で活躍している人材のデータも集まりやすくなり、自社のタレントマネジメントにも活かしやすくなったのではないかと想像します。
評価について、現場ではどのように運用されているのでしょうか。
大久保:
基本は、隔週で実施するマネジメントとメンバーの1on1です。毎回バリューの話に限定はせず、雑談や仕事の状況確認も含めて対話しています。
1on1で「バリューそのものと照らし合せる」というよりは、日々の仕事の状況について共通認識を持つことで、評価に納得感が生まれやすくなっていると思います。
荒木:
例えば、マネジメント側から「前回のミーティングでは『象』の視点をもう少し意識して欲しかった」など、具体的にバリューに紐づけて伝えるような場合はあります。1on1の中で、自然とバリューを前提にした会話が行われています。
また、採用の段階からミッション・バリューへのフィットを丁寧に見ています。採用ページでもミッション・バリューを明確に押し出しているため、これらの考え方にフィットしない場合は採用に至りにくいという前提があります。

変化と成長を加速させる組織文化
バリューの1つである「象」では、人や組織に前向きな変化をもたらし、成長を加速させるための「建設的なフィードバック」が推奨されているそうですね。フィードバック文化の浸透について、どのように見えていますか。
荒木:
「象なんですが」という前置きが、クッション言葉として使いやすくなり、恐れずに意見を伝えられる土台ができてきた、という声を耳にします。また、他の人がフィードバックをしている様子を目にする機会が増え、その様子を参考にしながら自分の行動に生かす人が増えてきた、という話も周囲から聞いています。
大久保:
社内コミュニケーションツール上で「フィードバック・イズ・ギフト」という絵文字を使うこともあります。以前に比べて、フィードバックが伝えやすい組織になってきたと感じています。
荒木:
もちろん、全員が毎回的確なフィードバックができる訳ではありません。ただ、バリューとして明確に定められたことで、「フィードバックを言えないことが良い状態ではない」という認識が広がったことは、大きな意味があると思います。
フィードバックをする上で、普段意識していることはありますか。
荒木:
人ではなく、プロジェクトや事象そのものに対してフィードバック伝えることを意識しています。
大久保:
以前、荒木さんに「これって何のためにやるんだっけ?」と言われたことや「目的のところから整理するといいと思うよ」と声をかけてもらったことがあります。
一方で、負の側面として「象」を盾にして「ちゃぶ台返し」ばかりしていてはプロジェクトは前に進みません。「まずやってみる人がカッコイイ」という「光」のバリューを表すフレーズがありますが、議論の叩き台を考えた人へのリスペクトを忘れずに、上手く活用していくことが大切だと感じています。
最後に、今後の展望についてお聞かせ下さい。
荒木:
バリューはひとまず2030年までを耐用年数として設計しているため、それまで大きく変える予定はありません。ただ、今後も積極的な採用は続き、組織もどんどん大きくなりますし市場環境も変わるので、状況に応じて、どこかのタイミングで再検討する可能性はあるかもしれません。
大久保:
SmartHRでは「変化し続けるものが生き残る」という考え方を大事にしています。今は、会社としてスケールアップのフェーズだからこそ、これまでの蓄積を活かしながら、さらにレバレッジを効かせて成長させていく面白さがあります。少しでも興味を持っていただけた方には、ぜひ採用にご応募いただきたいです。

<株式会社SmartHR 会社概要>
株式会社SmartHRは、クラウド人事労務ソフト「SmartHR」の開発・提供を通じて、人事・労務業務の効率化と組織づくりを支援する企業です。テクノロジーの力で働き方に関する社会課題の解決に取り組み、誰もが自分らしく働ける社会を目指しています。
・株式会社SmartHRホームページ
https://smarthr.co.jp
・株式会社SmartHR採用ページ
https://recruit.smarthr.co.jp/
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