「最近の若い子は、ちょっと注意しただけですぐ落ち込む」
「やる気があるのかないのかわからない」
「入社してまだ半年なのに、もう転職を考えてるって……」
人事の現場でこんな声を耳にすることが増えています。
実は作者である私自身、Z世代(1990年代後半〜2010年代前半生まれ)の一人です。この業界に入社し、「Z世代ってどう育てればいいの?」という問いに、ずっと当事者として向き合ってきました。
同世代を見ていて思うのは、「自我が強く、型にはまらない人が増えてきている」ということ。良くも悪くも、自分の軸を持っている。それが職場でどう作用するか、内側からは結構よく見えます。
この記事では、そのリアルな視点をもとに、「Z世代がなぜ辞めるのか」「人事として何ができるのか」を、データと現場の知見を交えながら書いていきます。

Z世代の育った環境
まず前提として、Z世代の育ってきた環境を整理しておきます。
Z世代の最大の特徴は、物心がついた時からスマートフォンとSNSがあったことです。情報を「検索して待つ」のではなく、「流れてくるものを瞬時に判断する」環境で育っています。
選択肢は常に豊富で、比較は容易で、「もっといいものがあるかもしれない」という感覚が染みついています。これは消費行動だけでなく、就労観にも直接影響しています。
また、多様性やジェンダー、気候変動といった社会課題への感度が高いのも私たちの世代の特徴です。「この会社は社会のためになっているか」を無意識に問いながら働いている、という感覚は、自分自身にも覚えがあります。
「安定志向」と「自律志向」が、実は共存している
就職氷河期を直接は知りません。でも、親世代がリストラや不景気を経験するのを見てきました。先行きへの漠然とした不安は、外から見るより強いと思います。
だからこそ、「安心できる環境で、自分らしく成長したい」というのが、私たちの本音に近いのです。安定と自律は矛盾ではなく、両立を求めています。この感覚、うまく言語化するのが難しいのですが、「どちらかを選ぶ」という発想自体がピンとこないんです。
よくある「Z世代への誤解」を、当事者として3つ解きます
誤解① 「成長意欲が低い」
これは違います。成長意欲は決して低くありません。ただし、「成長の文脈」が違います。
上の世代が「会社と一緒に成長する」というイメージを持ちやすいのに対し、私たちは「自分のキャリアを自分で育てる」という意識が強いです。会社はあくまで、自分の人生の土台として活用するもの。数年単位で自分の市場価値を意識しながら働いている人は、同世代に多いと感じます。
これを「会社への忠誠心が低い」と見るか、「自立した職業観を持っている」と見るか。視点が変わると、関わり方も変わってきます。
誤解② 「承認欲求が強すぎる」
「ほめないと動かない」と言われることがあります。でも、これは少し解釈がずれているかもしれません。
私たちが求めているのは「おだて」ではなく、フィードバックの頻度と質です。「自分の仕事が、誰かの役に立っているか」「自分は正しい方向に進んでいるか」を確認したい、という欲求に近いんです。
「いいね」という即時フィードバックの文化の中で育っているので、年に一度の人事評価は「サイクルが遅すぎる」と感じやすいのだと思います。
誤解③ 「すぐ辞める、ロイヤリティが低い」
転職へのハードルは、確かに上の世代より低いです。でも、「すぐ辞める」には理由があります。
同世代を見ていて感じるのは、環境に対する判断が早いということ。「ここでは成長できない」「この状況はもう自分には変えられない」と判断した瞬間、スッと心が離れます。長年我慢して働き続けるより、合わない環境を変える方が合理的だ、という価値観です。
転職市場が活況で、SNSで同世代の転職体験談が手軽に見られる今、「辞めてもなんとかなる」というリアリティもあります。
ただし、ここで正直に言わないといけないことがあります。
「環境のせいにして次に行けばいい」という思考に、本当に自己成長の余地はあるでしょうか?
完璧な職場環境など存在しません。変えられない物事に対する不満は、職場を変えてもまた出てくる可能性が高いです。「ここでまだできることはないか」を問う姿勢は、長期的なキャリア形成においても重要なはずです。
同世代として言えば、「すぐ環境を変える」ことへの自己批評的な目線は、持っておいた方がいいと思っています。
「静かな退職」はなぜ起きるのか
近年、「静かな退職(Quiet Quitting)」という言葉が注目されています。辞表を出すわけではないが、必要最低限の仕事だけこなし、心はすでに組織を離れている状態です。
Z世代にこのリスクが高い理由は、「我慢して爆発する」よりも「静かに距離を置く」という対処スタイルにあります。
兆候は突然ではなく、じわじわと現れます。会議での発言が減る。自発的な提案がなくなる。1on1で当たり障りのない返答しかしなくなる。
心が離れるきっかけの多くは、「自分のコントロール不可能な不満が積み重なったとき」です。
給与水準、組織の方針、上司の人格。自分ではどうにもできないことへの不満が一定を超えると、「ここで頑張る理由がない」という結論になります。そうなったら、もう表面上は穏やかなまま、心だけがスッと離れていく。
重要なのは、そこに至る前の段階で何ができるか、です。

人事が今すぐできること──「歩み寄り」の具体的な中身
では、人事や組織として何ができるのでしょうか。キーワードは「双方向の歩み寄り」です。
「話を聞いた」という事実を作るだけでは、逆効果です
1on1やアンケートを実施している企業は多いです。でも、Z世代が感じる「不信感」の多くは、「形式的・儀式的に話を聞いているだけ」という体験から生まれます。
話を聞いたのに何も変わらない。なぜその結論になったのか説明がない。「意見は参考にします」で終わる。
これでは逆効果です。「声を上げても変わらない」という学習をさせてしまいます。
大切なのは、「聞いた後のプロセスを透明にすること」です。
「意見を聞きました。この部分はこういう理由で変えられます。この部分は変えられません。あなたはどう思いますか?」
この一往復があるだけで、組織への信頼感は大きく変わります。メリット・デメリットを踏まえた選択肢を提示し、「あなたはどうしたいか」を問う。それが「歩み寄り」の実態だと、私は感じています。
「なぜ」を省略しないでください
私たちの世代は、指示の背景にある「意味」を強く求めます。「なぜこの仕事が必要なのか」「これが誰の役に立つのか」が見えない仕事は、モチベーションにつながりにくいです。
「とにかくやってみて」「先輩もそうやってきた」という説明では、納得感が生まれません。目的から伝えるコミュニケーションは、手間がかかるようで、長期的には離職防止とエンゲージメント向上に直結します。
「キャリア自律」を組織の文脈に乗せる
私たちのキャリア自律意識を「組織への不満」と捉えず、組織の成長と本人の成長を接続する機会として活かせるかどうかが重要です。
「5年後にどうなりたいか」を一緒に考え、その実現のために今の仕事がどう役立つかを示す。Will/Can/Mustのフレームを使い、本人の意志(Will)・強み(Can)・役割(Must)の重なりを探す対話は、Z世代との1on1で特に有効です。
「会社のために働く」ではなく、「自分のために働いたら、会社にも貢献できた」という体験設計が、私たちの世代を動かします。
まとめ:Z世代は「難しい世代」ではありません
同世代を一言で表すなら、「自我が強く、型にはまらない世代」かもしれません。
良くも悪くも、自分の軸を持っています。納得できないことには従いません。でも、ちゃんと向き合ってくれる環境には、誠実に応えます。
「すぐ辞める」のではなく、「自分にはどうしようもない不満が積み重なったとき、静かに離れる」のです。
その前に何ができるか。「話を聞く」という形式ではなく、「双方向で歩み寄る」という実態を作れるかどうか。それが、Z世代が集まり、育つ職場をつくるための出発点になると思っています。
「推せる職場」は、Z世代にとっても例外ではありません。むしろ、Z世代が「推せる」と感じる職場こそが、これからの時代に選ばれる組織になるのではないでしょうか。
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