インタビュー

「制度を育てる組織」が社員を育てる

“仕事を発注すること”から始まる自律と働きがい

#推せる職場づくり #働きがい

制度は“与える”ものではなく“育てる”もの。社員の声を起点に制度を進化させ、自律と成長を支える―エッジコネクションの取り組みを通じて、「推せる職場」の在り方を探ります。

制度は“与える”ものではなく“育てる”もの。社員の声を起点に制度を進化させ、自律と成長を支える―エッジコネクションの取り組みを通じて、「推せる職場」の在り方を探ります。

推せる職場ラボでは、「推せる職場アクション宣言」の取り組みを通じて、様々な企業や組織が魅力的な職場づくりを進めることを後押ししています。

今回はアクション宣言に賛同いただき、特設サイトにて自社の取り組みをご紹介いただいた株式会社エッジコネクション広報担当の免坂遥香氏(以下免坂氏)に、「推せる職場」をつくるための取り組みについてお話を伺いました。

独自の社内制度など、働きがいを高めるための具体的な仕組み、その改善と定着に至るまでのプロセスに迫ります。

エッジコネクションについて

本日はよろしくお願いします。まず御社についてご紹介頂けますでしょうか?

免坂氏:はい。当社は2007年に創業した経営コンサルティング会社で、当初はテレマーケティングを主軸として事業を展開していました。

現在はお客様のニーズに応える形で、商談の代行や営業研修、人材紹介、さらには財務支援や人事評価制度の設計など、営業を軸に企業の成長を後押しするサービスへと領域を拡張しています。
事業の柱は現在「営業」「人事」「財務」の3つです。いずれも単なる外注的支援にとどまらず、クライアントの事業に入り込み、仕組みづくりから伴走支援するのが特徴です。

現在、社員数はおよそ65名です。東京本社のほかに、2015年に宮崎に設立したコールセンター拠点があり、そこに約40名が在籍しています。また2023年には福岡にも新たな拠点を開設し、10名ほどのチームが日々プロジェクトに携わっています。

免坂さんご自身はどのような経緯で入社されたのでしょうか?

免坂氏:私は以前、接客業に5年間ほど勤めていましたが、コロナ禍で業界全体が停滞する中、「このままでは先が見えない」と悩んでいた時に、友人から「うちの会社で広報募集しているけど、どう?」と声をかけてもらったのがきっかけです。
会社説明を受ける中で、努力がきちんと評価される仕組みや、成長の機会が設計されている点に惹かれ、「ここなら頑張った分だけ報われるかもしれない」と思い、入社を決意しました。

「社内発注制度」で生まれる自律と連携

頑張りが報酬に反映される制度の一つに「社内発注制度」というものがあると伺いました。どのような制度なのでしょうか?

免坂氏:はい。この制度は、法人営業担当がクライアントから受注した案件を、社内の実働部門に「発注」する仕組みで、創業初期から運用されている当社独自の制度です。

例えば、営業担当が「テレアポ代行」の契約を獲得したとします。その後、社内のインサイドセールス部門(コール部門)に対し、「この案件を担当してほしい」と社内設定の単価に基づいて業務を発注します。

この制度によって、営業側は案件を“社内に引き渡す”感覚ではなく、“パートナーに依頼する”意識で取り組むようになります。一方のコール部門も、「この案件を成果に繋げるとインセンティブに反映される」と自分ごと化できるため、全体の温度感が格段に上がるんです。

会社内で「発注」という概念を持ち込んでいるのが興味深いです。どのように運用されているのでしょうか?

免坂氏:例えばコール部門には複数のプロジェクトリーダーがいて、営業担当はその中から最適なリーダーに発注を行い、リーダーが案件内容やメンバーの稼働状況を見てアサインを調整するという流れになっています。

各リーダーは毎月の目標に向けて、「自分のチームでいくら分の受注が必要か?」と考えながら受注していくので、目標達成に向けて営業担当と連携を深める姿勢が生まれています。受注額に応じて得られるインセンティブも変わるため、「どうしたらもっと成果を上げられるか」といったノウハウ共有や工夫も活発です。

こうした現場の工夫や成果への意識をより深く理解するために、私自身も一時的にコール業務に参加しました。普段は広報の立場ですが、あえて部門を越えて実務に入る、いわば“社内越境”のような形です。「自分たちで受注して、結果を出して、報酬に反映される」という手触りのある経験は、想像以上にモチベーションを引き上げてくれることを実感しました。

広報など間接部門については、どのような位置付けなのでしょうか?

免坂氏:広報や人事、経理といった間接部門には、全社売上に対して一定の貢献割合をもとにインセンティブが付与されます。また社内で調整すれば、コール業務などに“越境”して働くことも可能です。職種を越えて働くことで、新しいスキルを得たり、他部門の業務理解が深まったりするので、組織全体の連携力にもつながっていると思います。

制度は“育てていくもの”──改善を重ねて今の形に

この制度は長く運用されているとのことですが、改善もされてきたのでしょうか?

免坂氏:はい、制度自体は創業初期から存在していますが、運用方法については社員の声をもとに何度も見直しを重ねてきました。例えば、以前は営業担当がコールチームメンバーを直接指名して発注していましたが、調整に時間がかかるうえ、稼働状況の把握が困難で負荷が大きいことが課題でした。

そこで現在は、営業担当は「個人」ではなく「プロジェクトリーダー」に発注する形になり、リーダーが稼働状況やスキルを加味してメンバーをアサインする体制に移行しました。結果として、業務開始までのスピードが早まり、案件管理もよりスムーズになっています。

また、売上計上のタイミングについても見直しがありました。以前はコール部門が案件受注時点で売上を申請できたのですが、その運用方法では業務の実施時期について、営業側とコール側での認識に齟齬が生じることがありました。

例えば営業担当から、自分の売上がコール部門への社内発注によって引かれているにも関わらず、発注したコール(テレアポ)がすぐに開始されず、先延ばしになっていることを改善したいという声がありました。

そのような問題提起を踏まえ、現在では、「実際にコールを開始する日が決まってから、売上申請を行う」というルールに変更されています。

制度を現場視点で磨き続ける体制があるのですね。改善の起点はどこから生まれるのでしょうか?

免坂氏:社員からの声です。例えば現場で上手く動けていない状況をリーダーが見て、「こうしたほうがもっと良くなるのでは」というアイデアが上がってくる場面があります。
そのような声を、まずは管理職に共有し、現場の実態を踏まえ、必要性の高い内容であれば、毎朝実施されている経営会議で即日共有されます。

経営陣も「制度は社員と一緒につくるもの」という意識があるので、社員の一言から翌週には新ルールが運用される、といったスピード感が特徴です。トップダウンで仕組みを「与える」のではなく、現場の課題感から制度を“育てていく”スタンスが、当社の根本にあると感じます。

自律を育むマネジメントとは

制度面の設計と同様に、マネジメントのあり方にも関心があります。社員の自律性を引き出すために、どのような取り組みをされていますか?

免坂氏:月に2回上司との面談があり、そこで自分の目標や成長、上司から見た自分の課題は何かを話し合う場があります。

その中で、よりスムーズに仕事を進めていくために、自分がどういうスキルを伸ばしていくことが必要か少しずつ見えてきて、これからどういう仕事をしていきたいか、どのように成長していきたいか、上司と擦り合わせる時間にもなっています。

上司から現状や目標について共有された後は、比較的自由に相談できるような感じになっていて、「自分がどういう仕事ができるようになって、どういう成長をしていきたいか」という話をすることもあれば、「いつまでに年収を何百万円にしたいと思った時に、どうすればいいか」という具体的な話をして、目標に向けて頑張っていくということもあります。

管理職の方は、どんなことを大切にされていると思いますか?

免坂氏:私自身、日々チャットや電話で上司に相談をしますが、自分が気づいてないところの課題まで拾い上げてくれることや、自分がポロッと話したようなことから話を広げて、改善を提案してもらうことが多いです。

広報の仕事では、人事部など他部署に意見をもらうようにしたらどうか、とアドバイスをされることもあり、部下が自分一人で考え込まずに、他者を巻き込んで仕事を進めていくことも大切にしているかもしれません。

そして指導をする時に人格や内面的なことではなくて、「行動」にフォーカスしてフィードバックしている点が特徴的です。「考えが甘い」とか「意識が低い」といった抽象的な否定ではなく、「ここをこう進めるともっと効率的だと思う」と、具体的な改善提案をしてくれます。

また、「1回注意されたからといって距離ができることがない」点もありがたいです。注意されたあとでも、別の話題で普通に話せるので、相談もしやすいですし、心理的な引っかかりが残りません。

なるほど。このように日常的な対話の中で社員が自律性や主体性を発揮するための土壌が育まれ、制度の柔軟な運用と改善にも繋がっているような気がします。

今後の展望

最後に御社として、また広報として免坂さん自身が今後力を入れていきたいことについて教えて下さい。

免坂氏:はい。今積極的に採用活動を行っていますが、人が増えていくタイミングだからこそ、”愛社精神”を育てていくことに力を入れたいと考えています。
愛社精神が育まれることで、社員同士のつながりや自社への理解が深まり、会社全体に一体感が生まれます。そうした前向きな社内の雰囲気があることで、新しく入社してくる方も自然と受け入れられやすくなり、スムーズに馴染んでもらえる体制づくりにつながると感じています。

どうしても自分の仕事に集中していると、他の部署やプロジェクトのことを考える時間が少なくなりますが、「誰がどんな目的で何をしているのか」「その中で自分がどう貢献できているのか」を知ることが、自信にも、やりがいにもつながると思うんです。

そういった“自分の役割が見える組織”をつくっていくことが、結果的に会社全体の成長にもつながっていくのではと考えています。

改めて免坂さんにとっての「推せる職場」とは、どんな職場でしょうか?

免坂氏:働きやすいのはもちろんですが、「挑戦して、成長して、楽しく働ける場所」でしょうか。

やらされるのではなく、自分で選んで挑戦したことが、結果として仕事の幅や成長につながっていく。そういう実感があれば、自然と会社のことを広めたくなると思います。

非常に興味深いお話でした。本日はどうもありがとうございました。

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